親で、8巡目で、テンパイした。待ちも悪くない。ここでリーチをかけない人は、おそらく1割もいないでしょう——土田プロ自身がそう言います。ところが今回の法則は、その「当たり前」に真っ向から待ったをかけるものです。安目引きにリーチ無し。テンパイした「入り目」が安目だったら、親だろうが8巡目だろうが、横に曲げない。これを法則として身につければレベルが上がる、勝ちやすくなる、というのが今回の主張です。
「安目引き」とは何か
まず言葉から整理します。同じ一向聴の形でも、引いてくる牌によってテンパイの中身は変わります。三色が付く牌、タンヤオが付く牌、ドラが付く牌で入れば高目。何も付かない牌で入れば安目。土田プロの言い方を借りれば、安目引きとは「タンヤオにもならない、三色にもならない、カーンとダウンした入り目」のことです。
そして、テンパイした瞬間に引いてきたその牌を入り目と呼びます。今回の法則が見ているのは、待ちの良し悪しでも、点数でもなく、どの牌で入ったか——この一点です。
実例①——東4局の親、8巡目、マイナス5000点
最初に示されたのは、東4局の親、8巡目、持ち点はマイナス5000点という局面です。ドラは五索。ここでツモってきた牌で、テンパイが入りました。
土田プロは視聴者に問いかけます。「この牌を切って、横に曲げている人、手を上げてみてください」。そして自ら答えを言ってしまいます——ほとんどの人が、リーチと言うでしょう。親だよ、8巡目だし、もうリーチと言えば上がったも同然みたいな待ちだ。ツモって裏が乗れば2600オール。赤をツモったら結構いけるんじゃないか、裏が乗って満貫とか——すぐにそういうイメージをする。
反対に、「ダマテンというか、リーチしないほうがいいかな」と思った人は1割もいないかもしれない、と。そのうえで、この考え方をこう切り捨てます。
なぜ浅いのか。この手牌には、もともと狙っていた入り方があったからです。ある牌がこう来れば、ググッと手が伸びて「気合のあるリーチ」になる——それを狙っていたはずでしょう、と土田プロは言います。もしくは、両面待ちに変わってくれてもいい。そう思うのは自由ですから、皆さん思うわけです。
ところが来たのは、タンヤオにもならない、三色にもならない、カーンとダウンした入り目。「これを安目引きというんですよ」。狙っていたものと違う、いちばん安いところで入ってしまった。
慌てない。リーチをしない
こういうときは慌てない。そしてリーチをしない。土田プロが挙げる理由のひとつは、シンプルに手変わりが結構あることです。
もちろん、狙っていた高目のほうに変わってくれればいい——それは誰でも分かります。それだけではなく、たとえばドラの五索を引いてくるツモだってある。いきなりそれが来たら、もうそれだけで大満足でしょう。そこで初めてリーチに行くことだってできる。急いでリーチをかける必要は、どこにもないわけです。
ここで、リーチをかけたくなる側の心理も、土田プロははっきり言葉にしています。親だからかけておかないと、子たちが手を進めてくるのが嫌だ。場を制圧したい。親を迎えたら場を止めたい、子方の手を止めたい——そういう意識が前に出てしまう人が多い、と。気持ちは分かる。ですが、安目、超安目を引いたら、ちょっと待ちましょうよ。手変わりするかどうかを見る。それが今回の法則です。
待ち牌が出たらどうするか——土田プロの巡目の目安
ダマにした以上、待ち牌が出てくることもあります。そのとき上がるのか。土田プロの答えは、まず「1500で上がってもいいし」——つまり上がること自体は否定しません。ただし本人はこう続けます。「私なんかは上がりませんけどね」。
目安として語られた巡目は、こうです。今は8巡目。9巡目・10巡目くらいまでは、出ても上がらない。ツモったら上がる。10巡目までは上がらないで待ち、11巡目・12巡目になっても手変わりしないうちに待ち牌がまた出たら、そこで上がる。
「何を呑気なことを言っているんだ。こんなの即リーチで何の問題もないじゃないか」——そう思う方がたくさんいらっしゃると思いますよ、と土田プロは先回りします。そして、こう返します。「違うんです。これが問題なんです」。
点数は増えるが、運は上がらない
ここからが、この回の核心です。皆さん、運を引き寄せたいでしょう、高めたいでしょう。下げたいとは思わないでしょう。運を現状より上げたい、アップさせたい——そう思うのであれば、ダマテンなんです、と。
横に曲げないで、縦に置いて、手が変わってからリーチ。この間合いがないと運は上がっていかない。ただの上がりになってしまう。下手をすると、運が下がる。
こんな入り目でリーチをしてロンで上がり、裏ドラが乗らなくて2900。裏ドラが乗ったとしても、土田プロは「運は上がらないと思いますね」と言い切ります。
ここは誤読しないでおきたいところです。土田プロは「2900は安いから損だ」と言っているのではありません。点数と運を、はっきり別のものとして数えている。安目引きで即リーチして上がると、点棒は増えるのに、運は増えない。だから、安目引きにリーチ無し——「これで運を上げていこう」という話なのです。
実例②——南1局の親、プラス1万点、8巡目
「安目引きにリーチ無し」——言ってみてください、心の中でもいいです、大事な法則ですよ。土田プロはそう言った直後に、「と聞いていても、この手を見たら皆さんはリーチすると思います」と2つ目の実例を出します。
今度は南1局の親、プラス1万点、まあトップが取れそうな8巡目。ここで三索を引いてきて、テンパイしました。しめしめでしょう、と土田プロ。待ちの牌はまだ場に出ていない。手の中には赤五筒もある。リーチをかけて中が出れば7700、裏が乗ればさらに上。親番ですから、ツモれば当然もっと大きい。「無条件でリーチをかけますよね。うん、気持ちは分かります。かけたい気持ちは分かります」。
でも、ここには重大な問題が発生しているのだと言います。
三索は「大安目」だった
問題は、ツモってきたのが三索だったことです。この手は、六索を引いていれば一気通貫ができていた。しかもドラも来る。リーチ・ツモ・中・一気通貫・ドラドラ。あるいはリーチ・中・一気通貫・ドラ。出上がりでも十分に高い。3翻上がった状態でのリーチなら、私も納得です——土田プロはそう言います。
ところが実際に来たのは三索。さっき何点と言いましたか、出たら7700と言いませんでしたか。「何、その楽さ」。土田プロは、この三索を引いた瞬間のショックを、牌をひっくり返してしまうほどだ、と身振りで表現します。「六索が来てくれるかな」と思っていたところに来た三索は、安目引きの、大安目。3翻下がってしまった。
それなのに、人は不思議と冷静になってしまう。「ああ、中が出たらリーチをかけて7700。ツモればもっと大きい」——頭の中が、麻雀の本質から煩悩のほうへ、ガーッと振られてしまうわけです。
本質はこうです。安目を引いたらリーチはかけない。待つんです。待って、中が出たら上がる。3900で我慢。「いけないんですよ」と土田プロは念を押します。
見えないものと戦っている
なぜ我慢なのか。皆さんは麻雀をしているとき、見えないもの——運——と戦っているからです。運と向き合っている、と言ってもいい。運が高くなるように、「運よ高くなれ」というイメージで打つ。
その場合、安目を引いたときの運は下がっている感じで来ている。下がっている感じでリーチをかけるのはいけない。上がっている感じでリーチをかけるのはいい。「うおーっ」と来たらリーチ。それはいいんです。
「あら、三索なの」となったら、それは安目引きですから、運はちょっと下を向いた形で来ている。六索が来たときは、上を向いた形で来る。入り目——テンパイした牌——が下向きに来たときは、リーチをかけない。そうすると、そのまま中で上がっても、運はこう(上向きに)なる。下向きでテンパイしたけれど、中でダマのまま上がれば、運は上を向く——土田プロはそう説明します。
「リーチして上がればいい」の弱点
「リーチして上がれば、運だって上がるだろう」。そう言いたくなります。土田プロの返しはこうです。「リーチして上がれなかったら、どうするんですか」。
親のリーチですから、他家は「中は怖いな」と思って止めてくる。上がれない可能性が、リーチによって上がる。そういうことも含めて、一旦リーチをかけずにいれば、その間に「うわっ」と手が良くなる牌が来るかもしれない。そのチャンスを逃してはいけない。
運というのは本当は不安定なもので、ぐわっと上がる瞬間がある。その瞬間を逃さないためにも、安目引きのときはリーチを自重する。かけたい気持ちは分かる。それでも縦に切る、というコントロール。自分の煩悩を捨てて、本質で打つ。安目を引いたらリーチはかけない——お分かりいただけましたか、と土田プロは締めくくります。
まとめ:安目で入ったら、横に曲げない
- 法則 … 安目引きにリーチ無し。テンパイの「入り目」が安目なら、親でも8巡目でもリーチしない
- 安目引きの定義 … タンヤオにも三色にもならない、カーンとダウンした入り目。狙っていた高目と違う牌で入ること
- やること … 慌てない。ダマにして手変わりを待つ。手が変わってからリーチ
- 出上がりの目安(実例①) … 9・10巡目は出ても上がらない(ツモは上がる)。11・12巡目に手変わりが無ければ、出たら上がる
- 点数と運は別 … 安目引きで即リーチして上がると、点数は増えても運は上がらない。下手をすると下がる
- 運の向き … 上がっている感じで来たらリーチしてよい。下がっている感じで来たらリーチしない
- リーチの弱点 … 上がれなかったらどうするか。かけずにいれば、その間に手がぐわっと良くなる瞬間を拾える
- 姿勢 … 煩悩を捨てて本質で打つ。かけたい気持ちを、縦に切るというコントロールで抑える
「親で8巡目、待ちも良い」——通常はリーチをかける条件がそろった局面です。土田プロの法則は、そこにもうひとつ、どの牌で入ったかという物差しを足しています。入り目が上を向いていたか、下を向いていたか。点棒の計算とは別の場所で、運の向きを読む。2600オールや7700を目の前にして横に曲げないのは、その運を取りに行く打ち方だ——編集部としては、そんな回だったと受け取りました。




